認知症の親の不動産売却を可能にする突破口
- 2019.06.24
- 個人間売買・直接登記
売却を難しくしている最大の壁
認知症の親の不動産を売ろうとした場合、行き詰ってしまう一番の原因が
「司法書士に登記できないと言われた」
というものです。
司法書士が不動産の売買契約にもとづいて所有権の移転登記を行う際、本人確認や売却の意思確認を行う義務があるため、売り手に認知症の疑いがあるとここでつまづいてしまうのです。
実は、成年後見制度を使わずに売却できる可能性がある
本やインターネットで認知症の親の不動産を売る方法を調べると、9割以上が「成年後見人を立てて売却する」となっています。
しかし、この話には大きな盲点があります。
本やインターネットで情報を発信しているのは、ほとんどが司法書士です。
司法書士は成年後見制度を活用する際に必要な手続きを代行することがひとつの収入源になっています。
また、認知症の疑いのある方の登記を行って、不動産を売った時すでに認知症だったことが後から判明した場合、売買契約自体が無効になるだけでなく司法書士がその責任を問われてしまいます。
認知症といってもその程度は様々ですので、司法書士が大丈夫だと判断しても裁判所がダメだと判断する可能性もあります。
ですので、認知症やその疑いのある方の不動産売買に関わること自体が、司法書士にとってはリスクとなります。
それに、司法書士が所有権の移転登記で得られる報酬は10万円前後です。
そのためにわざわざ資格をはく奪されるようなリスクを取りたくないという気持ちは理解できます。
そういった理由で、司法書士は「認知症」と聞いただけで断るか、成年後見制度の活用を勧めることになるのです。
実際は成年後見制度を活用せずに契約できる状態だとしてもです。
所有権の移転登記は司法書士に依頼するのが一般的になっていますが、実は自分で行うことも可能です。
所有権移転登記に関する法律は「不動産登記法」で定められていますが、条文を見ると「登記は自分で行うことが原則である」ということがわかります。
不動産登記法 第60条
権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、
登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。
不動産の売り手は所有権移転登記をしなければならない登記義務者、買い手が登記権利者です。
「司法書士に依頼しなければならない」とはどこにも書かれていません。
また、登記の申請先である法務局では、登記を自分で行うことを『本人申請』と呼び、正式な手続き方法とされています。
つまり、まだ意思能力があるのに司法書士に断られてしまうような場合、自分で所有権移転登記をすれば売却できるのです。