認知症の親の不動産を名義変更する方法

「売れないのなら名義変更してしまえばいいのでは?」

と考える方がいらっしゃいますが、そもそも不動産には法律上「名義変更」という手続きが存在しません

親の不動産の名義を子どもに変更するには、次の2つの手続きのいずれかを行うことになります。

 

1.親から子どもへ「贈与」する

親が子どもに不動産をあげるということです。

具体的には、不動産の所有権を親から子どもに移す手続き(所有権移転登記)を行います。

この手続きをすると、不動産の所有者に関する情報を記録する「不動産登記簿」に

・所有権が親から子どもに変わったこと
・所有権が変わった理由が「贈与」であること

が記録されます。

この方法が一番簡単そうですが、いくつかの注意点があります。

 

所有権移転登記にお金がかかる

「所有権移転登記」を行う際、登録免許税という税金を国に納める必要があります。

贈与による所有権移転の場合、登録免許税の税率は、不動産の固定資産税評価額の2%です。

例えば、評価額が1000万円の不動産を贈与した場合、登録免許税は20万円となります。

この登録免許税は、所有権移転登記の申請をする際に支払わなければいけません

 

贈与税が発生する

家や土地などの不動産、車などの資産を無償で譲り受けた場合、贈与税がかかります。

毎年1月1日から12月31日までの1年間で贈与された財産の合計額に対して、贈与税の申告とその納税を翌年2月1日から3月15日までの期間に行う必要があります。

ただ、贈与税には基礎控除が110万円あるため、贈与された金額が110万円以下であれば、贈与税の申告は必要ありません。

20歳以上の子どもが親から不動産の贈与を受ける場合、次の税率で贈与税がかかります。

贈与された金額(万円) 税率 控除額(万円)
200万円以下 10% 0
400万円以下 15% 10
600万円以下 20% 30
1,000万円以下 30% 90
1,500万円以下 40% 190
3,000万円以下 45% 265
4,500万円以下 50% 415
4,500万円超 55% 640

親から不動産の贈与を受ける場合は、不動産の価値を計算して贈与税がいくらかかるか調べておく必要があります。

 

2.親から子どもへ「売却」する

通常の不動産取引と同じように、親を売主、子を買主として売買契約を結ぶことで名義変更をします。

具体的には、贈与の場合と同様に、不動産の所有権を親から子どもに移す手続き(所有権移転登記)を行います。

この手続きをすると、不動産の所有者に関する情報を記録する「不動産登記簿」に

・所有権が親から子どもに変わったこと
・所有権が変わった理由が「売買」であること

が記録されます。

売買による名義変更の場合、次の注意点があります。

 

所有権移転登記にお金がかかる

贈与と同様に、売買に伴って「所有権移転登記」を行う場合も登録免許税が発生します。

税率は贈与とほぼ同じです。

 

売却に伴って譲渡所得税や贈与税が発生する

不動産を売る際「いくらで売るか」は所有者(名義人)の自由です。

親から子どもへ名義を変更する目的で売るなら、できるだけ安くしようと考えるのが普通でしょう。

しかし、いくらで売るかによってかかる税金が変わってきます

 

安く売ると子どもに贈与税がかかる

不動産の時価と、実際に売却した金額の間に差異がある場合、その差異に対して贈与税がかかります。

「無償で譲り受けると贈与税がかかるから、格安で買って贈与税がかからないようにする」

というのは通用しないということです。

手続き上は売買でも、安くした分の金額が贈与とみなされてしまいます。(みなし贈与と言います)

 

親に譲渡所得税がかかる

譲渡所得税というのは、不動産を売ったことによって得た利益に対してかかる税金です。

不動産の購入金額よりも売却金額のほうが高い場合に、譲渡所得税がかかります。

実際の計算はもっと複雑になりますので、もし売買で名義変更をする際は事前に税理士に確認が必要です。

 

認知症の親の不動産の名義変更は否認される可能性が高い

贈与にしろ、売買にしろ、所有権の移転登記は司法書士が行うのが一般的です。

その際、司法書士には所有者の本人確認や意思確認を行う義務があります。

所有者が認知症で、本人に判断能力が無いと判断された場合は、司法書士が手続きを行ってくれません。

もし手続きを行った時すでに認知症だったことが後から判明した場合、手続き自体が無効になります。

「親の財産を子どもに譲って何が悪いの?」と思うかもしれませんが、子どもが認知症の親を騙して勝手に名義変更をしてしまうことを防ぐためです。

そういったトラブルを回避するために、判断能力に支障のある方を保護、支援する制度があります。

これを成年後見(せいねんこうけん)制度といい、実際に支援する人を成年後見人(せいねんこうけんにん)といいます。

 

成年後見制度を活用するのが一般的、ところが…

認知症になってしまった親の家や土地を名義変更する場合は、この成年後見人を立てて代わりに契約してもらうのが一般的です。

成年後見人を立てるには、配偶者や子供などの親族が家庭裁判所に申し立てる必要があります。その際、

「私が成年後見人になります」
「この人を成年後見人にしてください」

と、希望を出すことはできますが、最終的には家庭裁判所が適任者を選ぶので、誰になるかは分かりません。

裁判所が公開したH27年のデータによると、次のような人が成年後見人になっています。

このように、家族の中から選ばれることもあれば、弁護士や司法書士などの専門家の中から選ばれることもあります。

ただ、この成年後見人の制度…多くの問題の種があり、活用するのをためらう方が少なくありません。

 

成年後見人になる最大のデメリット

成年後見人というのは、あくまでも本人の代理で法律行為を行ったり、日々の財産管理を行うのがメインの仕事です。

「名義変更が済んだら終わり」ではありません

通帳記入による預貯金の入出金チェックや公共料金の支払い、税金の申告や納税、医療や介護サービスの契約、定期的な家庭裁判所への報告…

こういった仕事が10年、20年…原則として本人の病状が回復するか、亡くなるまで続きます。

親が長生きしてくれるのは嬉しいことだと思いますが、その一方で生きている間は成年後見人という役目を背負い、面倒に感じてしまうかもしれない様々な仕事をし続けなければならないのです。

 

専門家が選ばれると毎月報酬を払うことに…

実際は弁護士や司法書士と言った専門家が選ばれることが多く、報酬は月2万~5万円程度、年間にすると24~60万円程度です。そして、この報酬は親が亡くなるまで続きます。

縁起でもないお話ですが、仮に10年後に亡くなると仮定した場合、240~600万円もの負担になります。

最近では成年後見人による財産の横領事件も問題になっています。

このように、成年後見人をつけるということは

 

負担を背負い続けるか、お金を払い続けるか

自分や親族が選ばれても、専門家が選ばれても、どちらに転んでもあなたやご親族の生活に支障が出てしまうのです。

「名義変更のために、どうして私がこんなに苦労しないといけないの?」

親族の誰か一人に負担が集中すると、親族間のトラブルに発展するかもしれません。将来相続も発生するでしょうし、関係が悪化したまま親が亡くなってしまうと問題がドロ沼化する恐れもあります。

 

認知症になった後で名義変更するには?

認知症といってもその程度は様々です。

日によっても天気や時間帯によっても状態は変わります。

実際、認知症の判断基準にはあいまいなところがあり、加齢によって脳の機能が低下しただけなのか認知症なのか判断が難しいです。

そこで当サポートオフィスでは、

本当は名義変更できる状態なのに「できない」と言われてしまい、

・相続が発生するまで待つ
・空き家の状態で放置する

など、不本意な選択をしてしまう方を減らす活動をしております。

具体的には、認知症に精通した司法書士と連携を取り、これまで解決してきた実績をもとに判断して名義変更のサポートをしております。

 

 

当サポートオフィスを始めてからすでに3年が経ちますが、サポート開始当初より北は北海道、南は沖縄まで、全国からご相談が寄せられています。

その一部をご紹介すると…

両親ともに要介護1の認知症です。母が先に施設に入り、父も入ることになりました。築50年の団地が父の名義となっていますが、独身の姉が父の後に住みたいと考えています。父が存命の間に名義変更を行わない場合と、無理しても名義変更しておいた場合のメリットとデメリットを教えて下さい。

祖父名義の土地建物の名義変更をしたいのでご相談させて頂きました。父は去年癌で他界し、母は存命です。祖父はアルツハイマーを患い現在施設に入所しており、祖母は統合失調症で病院に入院しております。父には妹がいますが、その人も統合失調症で施設へ入所しております。以上の理由から、物事の判断が正確に出来る人物が母しかおらず、母もこういった情報には疎いので、孫である私が代理で問い合わせさせて頂いております。父が去年他界し、祖父名義の土地建物財産の維持が出来ず、整理をしたいと思っております。

父が脳梗塞で認知症になり現在施設にいます。父名義の家がありますが、誰も住んでおらず管理が難しいため、出来れば売却したいと思ってます。長男に名義変更を出来る方法、もしくは父名義のまま売却する方法のどちらかにすることが出来ないか相談させていただきたいです。

 

このように、認知症の親の不動産の問題は、専門家のサポートなしに進めるのは難しいお話が多いです。

判断を間違えると、名義変更という話だけでは終わらず、成年後見制度や相続の問題など、あなたやご親族の今後に大きな影響を与えうる事態に発展する恐れがあります。

ただ、この問題を解決するには認知症や相続、不動産に関する幅広い専門知識が必要になりますので、『誰に相談するか』がきわめて重要になってきます

 

私がお話を伺います


安次富 勝成(あしとみ かつなり)

認知症不動産売却サポートオフィス 代表

【主な保有資格】
・宅地建物取引士
・公認 不動産コンサルティングマスター
・相続アドバイザー協議会認定 上級アドバイザー
・相続コンサルティングマスター
・米国認定不動産投資顧問(CCIM)
・法務大臣認証ADR調停人
※不動産が絡む揉め事を裁判せずに解決する専門家

はじめまして、認知症不動産売却サポートオフィス代表の安次富(あしとみ)と申します。

私は普段、不動産がからむ相続の問題解決をお手伝いすることが多いのですが、関係者の中に認知症の方がいて、解決が困難になるケースを数多く見てきました。問題が起きてからではなく、認知症の疑いが見られた段階で適切な手続きを行い、問題を未然に防ぐお手伝いがしたいと思い、このホームページを開設しました。

繰り返しになりますが、認知症の方の不動産問題は判断を間違えると、成年後見制度や相続の問題など、あなたやご親族の今後の人生に多大な影響を与えてしまう恐れがあります。

認知症に関わる問題は早ければ早いほど選択肢が増え、解決できる可能性が高くなりますしかし、このページでお伝えしたことを知らないままご両親の認知症が進んでしまうと「あの時にもっと調べておけばよかった…」と、後悔してもしきれないほど悪い状況に陥ってしまうかもしれません。

もしこれまで不動産を贈与・売却したご経験が無ければ、色々と分からない事やご不安もあるかと存じます。

しかも、この度は認知症という状況も加わっておりますので、通常よりも複雑なお話になることが予想されます。

当サポートオフィスには成年後見制度が定められた民法や不動産売買に関連する法律に精通している不動産のプロと認知症に精通した司法書士がおります。

認知症が疑われるご本人様の状態により、必ずご希望どおりになるという保証はできませんが、他のどこよりも的確な判断を行えるという点については間違いないと自信を持っております。

ご相談は無料です。

どうか遠慮などならさずに、この機会にご相談ください。ご連絡をお待ちしております。

 

ご相談の流れ

1.ご相談受付(無料)

ご相談は電話、メール、LINEで承っております。このページ下部にそれぞれご案内がございますので、ご都合のよろしい手段でご連絡ください。

今のご状況を伺いながら、解決策を検討するために必要な事をお尋ねしたり、ご提供をお願いしたい資料をお伝えいたします。

 

2.アドバイスや解決策のご提示(無料)

必要な情報が揃いましたら、アドバイスや解決策をご提示いたします。

別途費用がかかる取り組みにつきましては、料金についてもご案内させていただきます。

 

3.サポートのお申込み

ご提案した解決策に取り組む場合は、サポートのお申込みをしていただきます。

解決策の内容によっては、不動産に詳しい弁護士や司法書士などの専門家をご紹介させていただくこともございます。

 

4.サポート開始

ご依頼を頂きましたらすぐに名義変更の実現に向けて動き出します。

必要に応じて認知症を熟知した司法書士と連携しながら、関係者との調整や各種手続きを行っていきます。

着手後はこまめに連絡を取り合い、進行状況を適宜ご報告いたしますのでご安心ください。

目次